2026年3月17日、資源エネルギー庁は「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計WG」の第10回会合を開催し、小売電気事業者に対する量的供給力確保義務のとりまとめ案(資料3)を公表しました。

本記事では、小売電気事業者に特に影響の大きいポイントを整理します。

義務水準の確定

とりまとめ案では、以下の義務水準が示されました。

時点 確保率 対象需要
N-3年度前(実需給3年前) 50% 直近の販売実績ベース
N-1年度前(実需給1年前) 70% 直近の販売実績ベース

需要の算出は直近の販売実績をベースとする方法が採用されました。従来議論されていた「想定需要」ベースではない点に注意が必要です。

履行措置:B案(指導・勧告)が基本

義務未達時の措置について、運用開始当初はB案(指導・勧告)を基本とする方針が示されました。

B案の概要(運用開始時)

  • 電気事業法に基づく指導・勧告の対象
  • 勧告実施時には事業者名を公表
  • 各事業者の個別事情に配慮した柔軟な対応が可能
  • 透明性・公平性・予見性の確保が継続検討課題

A案(容量拠出金の追加徴収)

A案については、運用状況を見て導入を引き続き検討する方針です。システム構築に一定期間を要するため、運用開始当初は見送りとなりました。

事業者への影響

B案のもとでは、義務未達時に事業者名が公表されるリスクがあります。レピュテーションへの影響は大きく、需要家離れや取引先からの信用低下につながる可能性があります。「金銭的ペナルティがないから大丈夫」という認識は危険です。

対象事業者と軽減措置

全小売電気事業者が対象です。ただし、販売電力量が5億kWh未満の小規模事業者には、運用開始から一定期間、以下の軽減措置が講じられます。

通常の義務水準 小規模事業者の軽減措置
N-3年度前 50% 25%
N-1年度前 70% 50%

電源種別・先物の扱い

  • 再エネ電源を含め、電源種別は問わないことが明確化されました(kWhベースで計上)。
  • 電力先物については、現物での確保を基本とし、先物の扱いは引き続き検討とされています。

適用スケジュール

2030年度供給計画(2030年2月提出)からの運用開始が想定されています。N-3/N-1は固定の暦年ではなく各実需給年度を基準とした相対年で、運用開始時点では複数の実需給年度を同時に確認する構造です。

第4回WG(2025年8月8日)資料4のスケジュール案によると、2029年度〜2030年2月の供給計画提出時に、2030年度供給分について7割(N-1)、2032年度供給分について5割(N-3)の達成状況が確認されます。準備期間は実質3年強です。

今後の動向

今後は以下のスケジュールが想定されています(出典:第4回WG資料4 p21)。

  • 2026年秋頃:供給計画の様式改正案の確定
  • 2027年度:2028年度供給計画から新様式を適用
  • 2028年度:中長期取引市場での取引開始想定
  • 2030年2月:2030年度供給計画提出 → 運用開始(確認開始)

制度の詳細な運用ルールについては、引き続きWG等での議論が行われる見込みです。

出典:
資源エネルギー庁「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計WG とりまとめ」(2026年3月)/第4回 制度設計WG(2025年8月8日)資料4