Survey Report

中長期電源確保義務化に関する
小売電気事業者アンケート結果

実施期間:2025年10月21日〜11月28日|有効回答数:105件

回答者の73%が現役の小売電気事業者。代理店・コンサル・業界団体を含む業界横断的な調査。

105
有効回答数
(現役小売:77社)
87%
「事業への影響あり」
と回答した割合
89%
再エネ比率拡大に
「取り組む意向あり」
調査設計について:本アンケートは、Q1「小売電気事業者として事業を行っているか否か」によるスクリーニング設問を設け、小売電気事業者(現役)のみを対象として集計しています。本レポートのQ1〜Q5はスクリーニング後の回答(有効105件)に基づき、設問番号を振り直して表示しています。

74%が義務化を「知っていた」
──認知は広がるが、制度詳細の浸透は途上

「中長期電源確保の義務化についてご存知でしたか?」への回答。小売電気事業者に絞った集計でも「一部内容のみ」が18%おり、義務化そのものの存在は知られていても制度設計の詳細は十分に周知されていない現状が浮かぶ。

74%
18%
8%
はい(詳細まで):78件(74%)
一部内容のみ知っている:19件(18%)
いいえ:8件(8%)

編集部メモ

義務化そのものの認知率は92%(はい+一部)と高い。一方で「制度の内容をよく理解していないため、勉強会などの開催を希望」「まだまだ内容が不透明であり回答できない」といった声が複数あり、制度の詳細周知が急務といえる。

「非常に大きい」が46%、
「影響あり」の合計は87%

「義務化が実施された場合、御社の事業運営に与える影響はどの程度だと思いますか?」への回答。「全く影響はない」はわずか3%にとどまり、業界全体が制度変更の波を強く意識している。

87% 影響あり
非常に大きい 48件(46%)
ある程度影響がある 43件(41%)
あまり影響はない 11件(10%)
全く影響はない 3件(3%)

編集部メモ

「全く影響はない」と答えた3件は、発電設備を自社で保有し既に長期電源が確保されているケースや、スポット取引に依存しない事業モデルであった。逆に「非常に大きい」の48件は、スポット市場依存度の高い小規模事業者に集中していた傾向がある。

最大の懸念は「調達コスト上昇」73%
──複合的なリスクが積み重なる

「義務化により懸念している点をお選びください(複数選択可)」への回答。電源調達コストの上昇が圧倒的な1位。調達不安・料金プランへの制約・CFリスクが続き、複合的なコスト圧力を業界が強く懸念していることが分かる。

電源調達コストの上昇
73.3%(77件)
電源調達への不安(確保できるか)
48.6%(51件)
柔軟な料金プランが作りづらい
36.2%(38件)
キャッシュフローリスク負担の増大
31.4%(33件)
顧客への価格転嫁が困難
26.7%(28件)
資金調達の不安(与信・保証)
19.0%(20件)

※複数選択可のため合計は100%を超える。回答者数105件を分母として算出。

編集部メモ

「電源調達コストの上昇」と「電源調達への不安」は表裏一体だ。長期・相対契約が増えると発電事業者側が強気の価格を付けやすくなるという指摘(「発電側の価格支配力が増す」)が複数の自由記述で挙がっており、義務化が逆に調達コストを押し上げる構造的リスクへの懸念が根強い。

「相対契約」66%・「PPA」53%が最多
──先物・自家発電も3割超が検討

「中長期電源をどのように確保することを想定されていますか?(複数選択可)」への回答。相対契約とPPAが上位を占め、先物市場活用や自社発電も有力な選択肢として挙がった。「どれくらいの負担になるのか不明のため検討できていない」という声も見られた。

相対契約の活用
65.7%(69件)
発電事業者との長期契約(PPA等)
53.3%(56件)
先物市場の活用
35.2%(37件)
自社で発電設備を保有
32.4%(34件)
アグリゲーターや仲介を通じた調達
30.5%(32件)
系統用蓄電所の保有・活用
24.8%(26件)
バランシンググループへの参加
20.0%(21件)

※複数選択可のため合計は100%を超える。回答者数105件を分母として算出。

編集部メモ

相対契約・PPAが上位だが、「与信力が低いと相対契約の交渉が不利になる」「中長期市場がなければPPAの流動性が不足する」という指摘が多かった。先物市場の活用(35%)が有力な第3の選択肢として浮上しているが、義務履行量として認めるかどうかは制度設計次第である点が課題として残る。

89%が再エネ拡大に「取り組む意向」
──「強く」が31%、「可能な範囲で」が58%

「義務化が進む場合、再生可能エネルギー(再エネ)比率の拡大に取り組む意向はありますか?」への回答。義務化が再エネシフトの後押しになるという期待もある一方、「化石電源の購入を義務付けるような制度にはしないでほしい」という再エネ系事業者からの切実な声もあった。

31%
58%
10%
強く取り組みたい:33件(31%)
可能な範囲で取り組みたい:61件(58%)
あまり取り組む予定はない:10件(10%)
取り組まない:1件(1%)

編集部メモ

「あまり取り組まない」の10件のうち、複数は「義務化が進むなら廃業も視野に入る」「現状の仕組みでは再エネ調達のコスト負担が重い」という立場からの回答だった。再エネ意欲は高いが、それを実現する調達インフラ(中長期取引市場・与信補完・コスト支援)が整っていないという声が同時に多く寄せられた。

アンケートが示す「3つの構造的課題」

今回のアンケートを通じて、義務化対応における3つの構造的課題が浮き彫りになった。

① 調達コスト上昇と与信格差の連鎖

義務化によって長期電源の需要が増加すると、発電事業者側の交渉力が高まり価格が上昇する。さらに、与信力の低い中小事業者はそもそも相対契約や長期PPAに参入できないという「二重の不利」が生じる。「中小事業者に対する信用補完」「政府系金融機関による低利融資」を求める声が多かった。

② 制度の不透明さが対応を阻害

「制度詳細が確定していないため戦略を立てられない」という声は、規模・立場を問わず共通していた。義務達成の評価軸・未達時のペナルティ・計算方法・供給計画への記載方法など、実務レベルの設計が周知されないと、2030年度施行に向けた準備が間に合わない可能性がある。

③ 先物・市場活用の位置付けが未決

先物市場を義務履行量として認めるかどうかは、35%が検討している有力な調達手段の扱いを左右する重要な論点だ。「先物の扱いが可能であることが望ましい」「EEXでの保有を確保として認める仕組みを」という具体的な要望が多数あった。この論点の決着は、市場全体の流動性設計にも影響する。

ETRMが果たせる役割

こうした課題に対して、ETRM(エネルギー・トレーディング・リスク管理)システムは複数の解を提供できる。①調達コスト・CF影響のシナリオ分析、②相対契約・PPA・先物を統合した確保量の可視化、③義務達成進捗のモニタリングと報告書作成支援。事業者が自社の「リスク許容度」と「最適な調達ミックス」を把握するための基盤として、ETRMの役割はこれまで以上に大きくなっている。

調査名中長期電源確保義務化に関する小売電気事業者アンケート
実施期間2025年10月21日〜2025年11月28日
調査方法Webアンケート(Googleフォーム)
有効回答数105件
主な回答者属性スクリーニング後、小売電気事業者(現役)のみを集計対象とした105件
公表日2025年12月

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