4月、東京エリアで月内ピーク26.96円/月間累計+47%の高止まり

2026年4月に入り、JEPXスポット市場のエリアプライスが急騰しています。東京エリアの日次平均価格は4月1日に26.96円/kWhを記録(3月月次平均14.38円から+88%)。その後、第2週(4/6〜12)は週平均19.53円まで低下したものの高止まりが続いており、4/1〜4/12の累計平均は21.14円/kWh(前月比+47%)となっています。

期間 東京 中部 関西
3月前半(9〜15日) 13.88 12.52 12.74
3月後半(16〜24日) 16.66 13.93 13.74
3月末(25〜31日) 16.64 14.41 12.48
4月第1週(1〜5日) 23.39 22.32 13.44
4月第2週(6〜12日) 19.53 18.67 16.29

単位:円/kWh。日次平均エリアプライスの期間平均。出典:JEPX公開データを基に算出

特に注目すべきは、東京・中部エリアと関西エリアの乖離です。4月第1週(1〜5日)は東京23.39円/kWhに対して関西13.44円/kWhと、エリア間スプレッドが10円近くに拡大しました。ただし第2週(6〜12日)には関西が16.29円/kWhへ回復し、スプレッドはやや縮小しています。地域ごとの電源構成の違い(原子力・再エネの稼働状況)が引き続き価格に大きく影響しています。

背景:ホルムズ海峡危機とLNG供給途絶

今回のスポット価格急騰の背景には、2026年3月に発生したホルムズ海峡の通航停止と、それに伴うカタールエナジーのLNG生産停止があります。イランによるドローン攻撃がカタールのラスラファン工業都市およびメサイード工業都市を標的とし、世界最大級のLNG生産施設が操業を停止しました(Al Jazeera, 2026年3月2日)。

これを受けて、アジアLNGスポット指標(JKM)は2月27日の11.06ドル/mmBtuから、3月9日には24.80ドル/mmBtu(+124%)へ急騰。日本・韓国のLNG価格は48%上昇したと報じられています(CNBC, 2026年3月3日)。

なお、JETROの分析によると日本のLNG輸入量のホルムズ海峡依存度は6.3%と限定的ですが(JETRO, 2026年3月)、国際LNG価格の上昇がJEPXスポット市場にも波及しています。さらに、2026年4月1日に日本政府の電気・ガス料金補助金制度が終了したことも、価格上昇を増幅させた要因と考えられます(経済産業省資料, 2026年3月31日)。

JEPXスポット価格:3月25日から上昇トレンド

日次データを詳細に見ると、JEPXスポット価格の上昇が始まったのは3月25日です。この日、東京エリアの日次平均は18.94円/kWhと、前日の14.71円/kWhから一気に4円以上跳ね上がりました。この時期は、カタールLNG生産停止後の国際LNG価格高騰がJEPXに波及し始めたタイミングと一致します。

日次価格の推移ポイント

  • 3/24 → 3/25:東京14.71円 → 18.94円(+29%、上昇トレンド開始)
  • 3/28〜29:週末で一時12円台に下落
  • 3/30〜31:年度末に17〜20円台へ再上昇
  • 4/126.96円でピーク(新年度入り・需給逼迫)
  • 4/5:東京19.16円、関西6.86円と乖離が極端に拡大
  • 4/7:東京23.67円(第2週も週初から高値継続)
  • 4/10:東京23.96円、中部23.97円(週後半に再び急騰)
  • 4/11〜12:週末需要減で東京14.16円 → 13.08円へ急落

2022年エネルギー危機との比較

2022年、ロシアによるウクライナ侵略に伴うエネルギー危機では、スポット価格の高騰が数ヶ月にわたって継続し、結果として83社の新電力が休止・廃止・解散に追い込まれました。

今回の急騰は、2022年と比較するといくつかの共通点と相違点があります。

2022年 エネルギー危機 2026年4月 中東情勢
トリガー ロシア・ウクライナ戦争 イラン攻撃 → ホルムズ海峡通航停止・カタールLNG生産停止
影響チャネル LNG供給不安 → 燃料費高騰 JKM +124%急騰 → JEPX波及 + 補助金終了
価格上昇の規模 数倍(数ヶ月継続) +69%(現時点、進行中)
退出事業者 83社 不明(今後の推移次第)
量的供給力確保義務 未導入 2030年度から適用予定

2022年との決定的な違い

2022年当時、量的供給力確保義務はまだ検討すらされていませんでした。スポット市場に100%依存していても制度上の問題はなく、リスク管理は各事業者の自主判断に委ねられていました。

しかし2030年度からは、N-3年度前に50%、N-1年度前に70%の供給力を非スポットで確保する義務が課されます。今回のような地政学的な急騰が発生した場合、義務を達成している事業者とそうでない事業者の間で、経営への影響が決定的に異なることになります。

この急騰が示す「量的供給力確保義務」の意義

今回の急騰は、量的供給力確保義務がなぜ必要なのかを、リアルタイムで証明しています。

仮に、50%の供給力を相対契約で確保している事業者を考えてみましょう。スポット価格が13円から27円に急騰しても、影響を受けるのは残り50%のスポット調達分のみです。一方、スポット100%の事業者は、調達コスト全体が2倍近くに膨れ上がります。

調達構成別:今回の急騰による影響試算

  • スポット100%の事業者:調達コスト +69%(全量がスポット価格に連動)
  • 50%相対契約 + 50%スポットの事業者:調達コスト +35%程度(相対契約分は固定)
  • 70%相対契約 + 30%スポットの事業者:調達コスト +21%程度

※ 相対契約の約定価格を10円/kWhと仮定した概算。実際の影響は契約条件により異なります。

この差は、規模が大きくなるほど経営に直結します。そして、価格高騰が長期化すれば、2022年と同じ構図 ── スポット依存の事業者が経営危機に陥る ── が再び現実となる可能性があります。

今、小売電気事業者が確認すべきこと

中東情勢がどの程度長期化するかは不透明ですが、以下の3点は今すぐ確認すべきです。

チェックリスト

  1. 自社のスポット依存率:現在の調達ポートフォリオのうち、スポット市場からの調達が何%を占めるか
  2. 価格急騰時の損益シミュレーション:スポット価格が20円、30円、50円になった場合の仕入コストへの影響
  3. 義務水準との乖離:2030年度の50%/70%確保義務に対して、現在どの程度不足しているか

これらの分析を手作業で行うのは現実的ではありません。リアルタイムのポジション把握、シナリオシミュレーション、義務達成率のモニタリング ── これらを一元的に管理できるのが、ETRM(エネルギートレーディング&リスクマネジメント)システムです。

まとめ

2022年のエネルギー危機は「過去の教訓」として語られてきましたが、今回の中東情勢による急騰は、同じリスクが今もなお存在していることを示しています。

量的供給力確保義務の運用開始が2030年2月提出の供給計画から予定されている中、「まだ先の話」と考えている事業者にとって、今回の急騰は最も身近な警鐘です。SaaS型ETRMならシステム導入自体は数ヶ月で可能ですが、調達戦略の見直しや相対契約の交渉には時間がかかります。準備期間は実質3年強しかなく、今が検討開始のリミットです。